※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
帰りにホームセンターに寄り必要な日用品を買い揃え、その日は帰宅した。
夕食は出前にした。引っ越しといえば蕎麦だが、静流の転職祝いもかね奮発して特上のお寿司を取った。
「シャワーを浴びてきます」
「はい、どうぞ」
夕食を終えると静流が先に浴室に向かった。
女二人のルームシェアと大きく異なる点として、風呂に気を遣うということがあげられる。静流のことだからありえないとは思うが、全裸の状態で脱衣所で鉢合わせしたら目も当てられない。
風呂に入る前に必ず互いの了解を得ること。静流と決めたルームシェアのルールのひとつだ。
ルールは他にもある。
家賃は毎月五日に振り込んでもらうこと。
光熱費と共用で使う日用品などの生活費、食費は折半すること。
月の初めには共有財布の支出を互いに確認しあうことなどが盛り込まれている。
「シャワー先に借りました。ありがとうございました」
風呂を終え、タオルを肩に掛けた静流がリビングに戻ってくる。
「私も入ってきますね」
引っ越しの手伝いや結婚指輪を買いに行ったりで随分と疲れていた。ゆっくり風呂に浸かって身体を休めたい。
「紗良さん」
自室に着替えを取りに行こうとした紗良を静流が引き留める。
「ルームシェアを了承してくれてありがとうございます。これからよろしくお願いします」
静流は初対面の時の硬さが嘘のように、眩い笑顔で微笑んだ。
(笑うと結構可愛いんだ……)
こうして二人は何事もなくルームシェア初日を終えたのだった。