※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。


「おはようございます、紗良さん」

 翌朝、紗良がリビングに行くと、静流は先に起きていて朝食を食べ始めていた。
 一週間も経てば静流にノーメイクの寝起きの顔を見られていても平気になっていく。紗良は恥じらいを捨て思い切りあくびをしながら静流の正面にある椅子に座った。
 ありがたいことに朝食は紗良の分まで用意されていた。トースト、ベーコンエッグにサラダ。上等な朝餉だ。

(おっと、いけない……)

 朝食を食べ始める前にキッチンに行き、電気ポッドのスイッチを入れておく。こうしておけば食べている間にお湯が沸く。

 先に朝食を食べ終えた静流が食器を片付け始める。自室に入るとスーツに着替えて再びリビングへと戻って来る。
 私服よりもダークグレイの細身のスーツの方がスタイルの良さと顔の造形美が際立つ。働く男の色気というやつだろうか。
 もそもそと朝食を食べ終えた紗良は洗面台に向かおうとする静流に声をかけた。

「静流さん、出勤前にお紅茶飲んでいきません?」
「朝からですか?」
「私は朝昼晩すべてお紅茶ですよ。お弁当のおにぎりに合うブレンドを日々探求していますから」

 会社には食堂もあるが、紗良は節約もかねて毎日弁当を持参している。専用のタンブラーにはいつも紅茶を淹れている。
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