※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
月城の車は駐車場を出ると、車通りの少ない山道を進んで行った。明らかに交通量が減っていき、急に不安に襲われる。
「あの……月城さん、こっちの道であってます?どんどん山の中を進んでいくんですけど……」
「ほら、あっちの国道だと観光バスとか多いでしょ?こっちの山道はほぼ地元の人しか使わない抜け道なんだ」
「へー…。そうなんですか……」
月城との会話もそこそこにして、今はとにかく静流に連絡しなくてはならない。紗良はバッグからスマホを取り出し、静流にメッセージを送った。
ところが、待てど暮らせどメッセージが送信済みにならない。
わけもわからず送信ボタンを押し続けていると、通信状況を表すマークが全て消えてることに気がついた。
(まさか、圏外なの!?山の中だから!?)
この情報社会において圏外がまだ存在するのか?それとも紗良の使っているスマホがいわゆる格安SIMだから?
どちらにせよこれでは通信圏内に入るまでは静流に連絡ができない。
(お願い……。早く繋がって……!!)
紗良は祈るようにスマホを握りしめ、まんじりと待った。
山道を走り続け峠をひとつふたつ越えるとようやく高速道路の入口に到着する。ここまでくれば連絡できると安心し、再びスマホを操作すると突如画面が真っ暗になった。