※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。

 紗良は静流の部屋のベッドに腰掛け、シャワーが終わるのを待った。
 自分から誘ったくせにめちゃくちゃ緊張している。着ていた下着も変えて一番可愛いやつをつけてきた。準備は抜かりないはずなのに、なぜこうも落ち着かないのだろう。

「お待たせしました」

 寝間着代わりのスウェット姿は見慣れているはずなのに、いつも以上に心拍数が上がる。

 静流は照明のスイッチを落とすと、眼鏡を外してサイドボードに置いた。
 肩をトンと軽く押され、背後からベッドに倒れ込む。投げ出された四肢の上から組み敷かれると、二人分の重さでギシリとマットレスが軋んだ。

「眼鏡……しなくていいんですか?」
「眼鏡がなくてもこの距離なら見えますから」

 ……確かに。静流の瞳には期待に胸を躍らせている紗良の姿が映っていた。レンズ越しではなく直接見る静流の瞳は欲情に支配されていた。
 目を瞑ると口腔をまさぐられるような激しいキスが降ってくる。思考が宵闇に溶かされ、静流の一挙手一投足に目が釘付けになる。

「夢みたいだ」

 パジャマのボタンが外されていき下着がお目見えすると熱い唇が皮膚をなぞる。
 ときに激しくときに優しく緩急をつけられながら胸の頂を弄ばれると喘いでしまう。

「どうやって抱こうか毎日考えていた」
「あ、そんな……うそっ……」
「本当ですよ」

 上目遣いで即答され紗良は恥ずかしくなって思わず手で顔を隠した。
 だってすごい殺し文句だ。毎日顔を突き合わせて生活していた裏側でそんな淫らな想像をしていたなんて!
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