※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
紗良はこれまで逃げてばかりで、一度も周平と話をする機会を持たなかった。
紗良は他人の痛みまで背負い込み、悩み苦しんだ静流のことを想った。
自分は被害者で、周平は加害者だと思いこみ、これまで彼の話をまともに聞こうとしなかった。
そんな自分では静流の恋人だと胸を張って言えない。
(周平……昔よりも少しやつれた?)
趣味のフットサルでうっすら焼けていた肌が今は青白くなっていた。
紗良との別れか、それとも慣れない福岡での生活が周平の中の何かを変えたのだろうか。
「ねえ、本当は何があったの?どうして離婚したの?」
周平は二股できるような器用な男ではない。だからこそ紗良は桑名との一件が単なる出来心からくる浮気ではないと思った。本命がすり替わってしまったのだとやるせない気持ちを抱えることになった。
周平は苦々しい表情になり目を伏せた。
「俺は……騙されていたんだ」
「騙されていた?」
「桑名は……妊娠していなかったんだ」
「……どういうこと?」
紗良は眉を顰めた。彼女の妊娠が発覚したからこそ紗良は周平との別れを選択したというのに。
「福岡行きの話が出て紗良と喧嘩ばかりしていた時、桑名からバーに呼び出されたんだ」