※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。


「私達、もうダメだったのよ。お互いのことを信じられなくなった時点でもう終わってたの……」

 周平の身の潔白を信じられなかった紗良。信用されていないことに絶望した周平。
 もしも互いにもう少しだけ歩み寄ることが出来ていたら、今頃二人の未来は違っていたものになっていただろう。
 紗良とやり直すことに希望を見出している周平に引導を渡すのは身を切られるように辛かった。
 でも、はっきりと伝えなければいけない。

「周平とはやり直せない。周平よりも大切にしたい人がいるの」
「なんだよ。それ……」
 
 はははと乾いた笑いが踊り場に響いていく。

「俺はダメだったのに、高遠課長は信じられるのかよ」
「周平……?」
「紗良と高遠課長の不倫の噂は知ってる。一課の連中から聞いたからな。結局、デマだったって話だったけど、本当は違うんだろう?」

 周平は紗良の両肩を掴むとそのまま壁に押し付けた。

「妻帯者だぞ!?愛妻家ぶって部下に手を出す男を信じるなんて正気かよ!?」

 声を荒らげ紗良を威圧する周平に、かつての恋人の面影はなかった。ふーふーと肩で息をする周平の目は血走り、今にも紗良に襲いかかりそうだった。
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