※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。

「他には!?どんなところに惚れた?」
「掃除が得意なところ……ですかね。あと、趣味に熱中しているところが素敵だと思います」

(月城さん、ちょっとグイグイ行き過ぎじゃないですか!?)

 静流も静流で臆面もなく真顔で言うものだから、紗良はますます身を縮こませた。
 架空の妻の人物像は紗良に酷似していた。
 掃除が得意というか、頻度が多いだけだ。
 埃っぽいのが苦手だからマメに掃除するようにしているだけだと、反論しようにもこの場で声を上げるわけにもいかない。

「意外だよね。高遠課長って愛妻家なんだ」
「奥さんが羨ましい!!私もイケメンの旦那様が欲しい!!」
「独身なら万が一でもチャンスがあったかもしれないのに既婚者じゃねえ……」

 男性陣の騒ぎを遠目から見ていた女性陣からは落胆のため息がこぼれていく。

(……なるほど)

 なぜ静流があれほどまでに過剰に架空の妻への愛を語るのか、合点が入った紗良は手をポンと打った。
 愛妻家をアピールすることで、自分に向けられる女性の興味を逸らそうとしているのか。
 それならそうと事前に言っておいてくれればいいのに。

 その後も静流の惚気は続き、彼が口を開くたびに紗良は恥ずかしさでお尻がムズムズしたのだった。
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