※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。


(つ、疲れた……)

 二次会はかねてからの打ち合わせ通り吉住に任せ、紗良は一次会で帰る面々と帰宅の途に着いた。
 家に着くとドッと疲れが出て、自室の扉を後ろ手に締めてその場にへたり込む。
 こんなに気の張る飲み会は初めてだった。それもこれも静流が架空の妻の話をネタなんかにするからだ。もういい、早く寝よう。
 二次会に行った静流が帰って来る前にささっとシャワーを浴びてパジャマに着替える。
 配信を追っているドラマを見たり、本を読んでいるとあっという間に夜が更けていく。
 そろそろ寝ようかと思い立ち、キッチンでノンカフェインのルイボスティーを一杯だけ淹れる。カップに口をつけた瞬間、玄関の方からドタンバタンと尋常ではない物音がした。

「静流さん……?」

 廊下の様子を窺うようにリビングの扉から顔を出せば、二次会から帰ってきたと思しき静流が玄関に座り込んでいるのが目に飛び込んできた。

「静流さん!!大丈夫ですか!?」

 静流は壁にもたれかかってぐったりしていた。頬には赤みが差し、熱い息が吐き出されている。
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