※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。

「さ、らさん……?」

 目はトロンとしていて、焦点は定まっていない。完全に酔っぱらっている。あらまあ。

「こんな状態でよく一人で帰ってこられましたね……」

 紗良はよろよろと千鳥足になる静流を手助けするように肩を貸した。静流の自室の扉を開け放ち、そのままベッドに転がす。
 体格差もある静流を運ぶのは一苦労だった。大仕事を終えふうっと息を吐きだす。うーんという静流の寝苦しそうな唸り声を聞いてはたと気が付く。

(脱がせたほうがいいかな……?)

 静流が着ているネイビーのセミオーダーのスーツ。確か、新卒の時に父親に買ってもらった物だ、とも言っていた気がする。そんな大切なものを一晩下敷きにしていたらシワだらけになってしまうし、万が一吐き戻すようなことがあったらスーツが台無しになる。
 
 紗良は五分ほど考えた結果、やむを得なく静流の服を脱がすことに決めた。

(失礼します……!!)

 紗良は四苦八苦しながらジャケットを脱がしネクタイを解きワイシャツのボタンを外していった。半ば意識のない人の服を脱がすなんていけないことをしているような気持ちになってくるが、今は気にしている余裕はない。
 順調に上半身を脱がせ終わるとここで新たな問題に直面する。
 下半身はどうする?

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