※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
木藤に想いを寄せられていることを知らない静流。
静流が本当は独身だと知らない木藤。
そして、全てを知りながら沈黙を守る紗良。
三者の奇妙な関係は不思議な均衡を保ち、そのまま何事もなく二週間が経過した。
クリスマスが目前に迫り、街の至る所にツリーとリースが飾られ、高らかにクリスマスソングが歌われるようになった。
クリスマスの後は正月が控えている。正月が終わればバレンタインデー、ホワイトデーと行事が続いていく。
恋人達には嬉しい季節だろうが独り身の紗良には無関係だった。
「課長はクリスマスはどう過ごされる予定ですか?」
「妻も仕事なのでいつも通りですよ」
「またまたあ!!課長のことだからムーディーなレストランとか予約してるんでしょう?個室アフタヌーンティーとか小洒落た真似してるし」
静流は月城の問いかけに微笑むばかりで詳細を答えようとしなかった。
(クリスマスか……)
各々が楽しそうにクリスマスの予定を上げていく中、紗良はひとり蚊帳の外だった。
かつては友人同士でささやかなパーティーを開くこともあったが、二、三年前から集まりが悪くなり、とうとう今年は誰からもお声が掛からなくなった。
紗良だって彼氏がいた時はそちらを優先していたし、誘われないこと自体は構わないのだけれど……どこか物悲しい気持ちに襲われる。これが独身女性の悲哀というやつなのだろうか。