※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
「三船さんもさすがに気づいたよね。私が課長に惹かれているって」
「……はい」
「実はあの時断られてちょっとホッとしたんだ。課長がプレゼントを受け取ってくれていたら、きっと諦められなかった。はっきり言われちゃった。"お礼以上の気持ちが含まれているなら受け取れない"って」
道を踏み外さないでよかったという安堵と、それでもこの想いを貫きたかったという諦めの悪い気持ち。どちらも木藤の本心だった。
「本当に、課長の奥さんが羨ましい……。あんなに愛されててさ……。三船さんもそう思わない?」
木藤はこぼれ落ちそうになる涙を堪えるように空を仰ぎ見た。
好きな人の好きな人になりたいだけなのに。なぜ、こんなにも喜んだり悲しんだり苦しんだりするのだろう。
「やだ!!三船さんまで泣くことないじゃない」
先に出逢っていればとか、もう少し魅力があったらとか、何回不毛なたらればを繰り返したら幸せになれるのだろうか。
「ああもう!!早くご飯食べちゃおうか?お昼休み終わっちゃう!!」
「……はい」
木藤に促されるようにして、紗良はお弁当箱の蓋を開けた。いつもと同じ、おにぎりが二つに卵焼きと作り置きのおかず。タンブラーにはお紅茶。
口一杯に頬張ったおにぎりはいつもよりちょっぴりしょっぱくて紗良はまた泣き出しそうになった。