※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。

 買い物を済ませ会社に戻ってきた紗良はエレベーターに乗り、営業二課のある二十階へと戻った。

「ちょっと!!邪魔なんだけど!!」
「すみません」

 戻ってきて早々に廊下の反対側から歩いてくる美人だが気が強いとめっぽう噂の総務部の一団に刺々しく文句を言われる。
 端に一歩避けて道を譲るが、すれ違い様に肩を思い切りぶつけられ、ふらりと無様によろけてしまった。その様子を彼女達はクスクスと鼻で笑った。

(うわー。感じ悪いなー)

 総務部とはあまり接点がない。露骨な意地悪をされるなんて心当たりが全くない。彼女達はいつもこんなことをしているのか?
  
「ちょっとあなた!!ぶつかっといて謝りもしないの!?」

 女同士の陰険な争いを目撃した木藤が強い口調で尋ねると、クスクス笑っていた一団は会釈してそそくさと廊下を歩き去っていった。

「大丈夫だった?」

 少しは木藤を見習えばいいのにと、紗良はひっそりと心の中で彼女達を蔑んだ。

「大丈夫です。吉住くんへの詫びのエナドリは死守しました。木藤さんにもいつも飲んでらっしゃる大容量のカフェラテ買ってきました。ご迷惑かけたお詫びに良かったらどうぞ」

「え?いいの?ありがと!!さっすが三船さん!!気がきくぅ」
 
 木藤と共に二課に戻り、詫びのエナドリを吉住に渡すと案の定大喜びだった。
< 96 / 210 >

この作品をシェア

pagetop