苺くんは、 蜜柑ちゃんを愛してやまない
「碧馬、ありがと」
「ん」

「碧馬、優しいね」
「そう?」

「でも、蜜柑ちゃんはあげないよ」

「……………
……は?」

「だって、今のって“蜜柑ちゃんを悲しませないため”に、割って入ったんでしょ?
俺と秘書がランチしてたこと、知られないように。
何?
優しい男をアピールして、俺から蜜柑ちゃんを奪おうとでも?」

「はい?
なんで、そうなんの?」

「じゃあ、どんな感情があっての行為?」

「蜜柑ちゃんを悲しませないようにってのもあるが、イチを助けたのもある。
…………つうか!俺は!“イチと違って”一筋なの!
彼女以外の女に、ふらふらしねぇよ!?」

「は?
俺も、蜜柑ちゃんしか愛せないよ?」

「………」
「何?」

「“蜜柑ちゃんに対しては”そうだろうな。
おそらく、イチは一生“蜜柑ちゃんだけを”愛し続けるだろうな」

「そうだよ!もう…蜜柑ちゃんしかいらないよ」

「でもイチ。
お前、大学ん時はどうだった?
浮気ばっかだったじゃん!
彼女いるのに他の女とホテル行ったり、彼女のダチの家に泊まったり。
もう……クズの中のクズだったろ?」

「そうだね。
でも、相手の女が誘ってくるから。
彼女がいてもいいから、一晩だけって誘うんだもん。
顔が可愛けりゃ、行くよね?」

「はぁ……クズだな…」

「うん、クズだね」

「クズにも失礼なくらいの、クズだ」

「クズだよ。
…………てか!今はそんなことしないよ?
蜜柑ちゃんを傷つけることしない」

「だから、助けたの」

「は?」

「イチが、やっと“本気で”愛した女だから。
これでも、二人を応援してんの!俺は!」

「………やっぱ、碧馬はいい男だね」

「なんか…イチに言われても、嬉しくない…」
一虎の言葉に、苦笑いの碧馬だった。



その日、自宅マンションに帰り大きな声で蜜柑を呼ぶ。
「ただいまー、蜜柑ちゃーん!」

パタパタ…とスリッパの音がしてくる。
一虎は、蜜柑の駆けてくる姿が好きだ。

玄関で両手を広げて待つ。

「一虎くん、おかえりぃ~」
「え……//////」

パフッと両手を広げた一虎に抱きつく、蜜柑。

「蜜柑…ちゃ…その格好…/////」
「フフ…可愛いでしょ?
兎~!」

蜜柑は、モコモコのルームウェアを着ていた。
だぼっとしたウサ耳のフードがついたトップスに、短パンをはいている。

「か、か、可愛い/////」
「でしょ?
ほら!モコモコ~気持ちいいよ!」
蜜柑が、トップスの袖を一虎の頬にスリスリする。

一虎は、気持ち良さそうに微笑んだ。
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