大江戸ガーディアンズ

一方、なんだか込み入った話になりそうだと察したおすては、盆を抱えるとお辞儀をして座敷を出るために腰を浮かせた。

「おすて、ちょいとお待ち」

ところが、おつたによって制される。

おすては盆を脇に置いて、再びきちっと座り直した。


おつたは与太に向かって告げた。

「ちょうどよかった。
この下働きの娘に先日、目出度(めでた)く『初潮(しるし)』が来てね。
いよいよ『初見世』を考えなきゃいけなくなっちまった(ところ)だったのさ。
……この子に『助太刀(すけだち)』させるよ」

それは……おすてが「(おとり)」になる、と云うことだ。


つまり——

おすてが、とうとう「女郎」になってしまうことでもあった。

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