大江戸ガーディアンズ

「いったい、何の用でなんしかえ」

羽衣は動じることなく彦左に問うた。

「わっちとあんさんとは、ほとんど話もしたことがありんせん」


「そうだな……羽衣、あんただけは何故か絶対(ぜってぇ)(そば)に寄らせてもらえねぇかったからな」

彦左は今まで一度たりとも、羽衣から化粧(けわい)も着付けも頼まれたことがなかった。

「せっかく、あんたに近づくために『男衆(おとこし)』になったってぇのによ」


羽衣は莨をひと呑みして、紫煙を吹かす。

「あんさんには……『気配』ってもんがありんせん」

羽衣はやはり「武家の娘」であった。

なにか武道の手解きを受けてきたわけではない。されど、(おの)ずと相手の性質(たち)を我が身に近づく「気配」で察していた。

「気配がありんしたら、心算(こころづもり)もできなんしが、あんさんではできかねのうなんし」


「じゃあ、何で納戸におれが入ってるって(わか)ったんだい」

< 210 / 316 >

この作品をシェア

pagetop