大江戸ガーディアンズ

すると、羽衣は行燈の灯りを納戸の方は向けた。

其処には一本の「紙縒(こよ)り」が落ちていた。

客への文を書いていて失敗(しくじ)った反故紙(ほごがみ)を縦に割いて紐状に(よじ)った物だ。

羽衣はだれかがこの部屋に忍び込んで納戸を開けたら(わか)るように、板戸にその紙縒りを仕込んでいたのだ。


「ふん、そうかい。
だがな——今となっちゃ、どうだっていいことさ」

彦左は懐から匕首(あいくち)を取り出した。

鞘から抜いて、抜き身にする。
鞘を放り投げると、じりじりと寄ってきた。


「ふうん……あんたが『髪切り』の正体でなんしたか」

されど、肝の据わった羽衣はまたひとつ、紫煙を吹かす。


だが、みるみる間に近づいてきた彦左は手を伸ばして、羽衣の鼈甲の笄を何本か(まと)めて引き抜いた。

その勢いで、ばさばさばさ…と羽衣の(つや)やかな髪が垂れて落ちてくる。

彦左は、がばり、とその髪の束を掴んで、容赦なく引っ張った。ぶちぶちぶちっ、と何本も髪が抜ける音がした。

流石の羽衣も、これには(うめ)き声をあげた。


そして、彦左が匕首を振り上げる。

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