大江戸ガーディアンズ

与太は、捕縛された彦左を囲む町方役人の中に島村 広次郎の姿を見た。

——島村様があすこにいなさるっ()うこった、おすては無事に逃げてんだな……


島村は此度(こたび)の御役目で、おすての「娼方(あいかた)」となった。

ただし、すぐに顔に出てしまうおすてには、「広島新田藩の若様の初登楼に随行する藩士」だと伝えていた。

——だいたい、おすてみてぇな奴に「囮」なんざ無理だってんだよ……


与太は島村に駆け寄った。

「おお、与太か」


「あ、あのっ……」

やはり、どうしても聞いておきたかった。

「えっと、その……かような大見世に登楼(あが)るってのは、どんなもんかなって思って……」


「そうか、おまえは興味あるのか。
朋輩からも『役得』だなと云われたがな。
遊女とは名ばかりの初見世の(おんな)であったし、大見世と云えど、引手茶屋も行けず宴会も御前様たちとは別であったゆえ、品川や千住などの岡場所とたいして変わらんぞ」

島村は乾いた笑みを浮かべた。

「それに、今は……好いた女がおるからな。
ゆえに、(おんな)には初日に『床入り』はできぬと云うた」


与太は心の底から安堵した。

このまま、地面に崩れ落ちてしまいそうだった。

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