大江戸ガーディアンズ

与太は我が目を疑った。

ごしごしと(こす)ってみる。


「ひ、彦左っ、おめぇ……逃亡(にげ)てきたのかっ」


今、久喜萬字屋の前には南北の奉行所で御役目を担う与力・同心など、錚々たる「町方役人」たちが集結しているはずである。

——あの中から……
一体(いってぇ)どうやって……


振り向いた彦左が一言、つぶやいた。

「……鈴」


「すず、って……あの、ちりりん、()って鳴る『鈴』かい」

だが、彦左からの返事はない。


——もう、人が変わっちまったからな……

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