大江戸ガーディアンズ

だから、与太はうーんと腕を組んで考えてみた。

そして、ぱっと顔を上げた。


すると——目の前には、もうだれもいなかった。

「おいっ、彦左っ。もっと先に進んじまったのかよ、危ねえっ()ってんだろ」

与太は辺りを見回して大声で呼ぶが、その所為(せい)でとんでもなく煙を吸い込んでしまった。

焦げ付く臭いも酷い。
思わず、身を二つ折りして激しく咳き込む。


辺りはさらに煙がひどくなっていく。

もうすぐ一間(いっけん)先——畳一枚向こうだって見えなくなってしまうだろう。


「畜生、いろんな(もん)が燃えてんのに……鈴の音なんて聞こえねえよっ」

また咳き込んでしまうのに、それでも与太は大声を出さずにいられなかった。


——ちりりん……


其れは微かな響きであったが……

「聞こえる……鈴の音が……」


——ちりりん……

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