大江戸ガーディアンズ
与太は其の微かな響きに導かれるままに、一階の奥にある納戸の前にたどり着いた。
この辺りはまだ炎も煙もほかに比べると少なくて、しかも裏口がすぐそこだ。
与太は被っていた「牛若丸」を外して、板戸を覆った。
直に板戸を触ると火傷してしまうかもしれないためだ。
井戸水で濡らして持ってきた島村の黒羽織だが、ほとんど乾いていた。
建物自体が壊れて柱が歪んでいるため、板戸はなかなか開かない。
それに「牛若丸」越しでも熱い。
何回か、がたがたがた…と揺らしながらやると、やっとからりと開いた。
お客に出す茶器や酒器が並んでいて、火は回っていないため焼けてはいないが、処々倒れて割れているのがあった。
「おすて……」
名を呼ぶと、ちりりん、と今までになくはっきりと聞こえてきた。
「おすて」
もう一度、しっかりと名を呼ぶと……