大江戸ガーディアンズ
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讀賣(よみうり)の呼び込みの声に、思わぬ(とき)を喰ってしまった。

与太は、伝馬町の大通りに面した賑やかな店々には脇目も振らず、奥まった細い通りに入っていった。

この辺りまで来ると人通りはまばらで、すれ違う者もほとんどいない。

駆ける与太の動きに合わせて、藍染めの小紋の着物がしなやかに身に寄り添う。
ごわごわした木綿地を身体(からだ)に沿わせるため、敢えて何度も水に潜らせてしんなりとさせたのだ。

とは云え、このまま走るには股引に纏わりついて動きにくいことこの上ない。
ゆえに、その裾を(まく)り上げて帯に手挟(たばさ)む「尻っぱしょり」にした格好で、ひたすら約束の水茶屋を目指していた。


「ちょいと、御免よ」

暖簾をパッと払って、水茶屋の内へ声をかける。

「へぇ、らっしゃい……あら、与太」

縞の長い前垂れ(前掛け)をした茶汲み娘が出てきた。

「おるい、伊作の親分はもう来てっかい」

与太がさように尋ねると、

「あぁ、伊作の親分さんなら、あすこだよ」

おるい、と呼ばれた茶汲み娘が店の奥に顔を向けた。

与太も店の奥へ目を遣った。


すると、一番奥の小上がりから中年の男が、ひょいと顔を出した。

「おう、こっちだ」

伊作だった。

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