サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
『本日も私共ASJ羽田発香港行きをご利用下さいまして、誠に有難うございます。現在巡航高度28000ft、上空12000mにて全て順調に飛行中です。皆様の香港国際空港への到着ですが、順調に参りますと、着陸で二十時七分。ターミナルの三十番ゲートへはほぼ定刻の二十時十五分の到着を予定しております』
聞きやすい落ち着いた声で、ゆっくりと話す声についついイヤホンを外して聞いてしまう。
空港周辺の天気や気温の説明がなされ、三十分ほどしたら着陸態勢に入るらしい。
『人生で一度は見てみたいと言われる百万ドルの夜景が眼下に広がる予定です。本日は天気にも恵まれ、空気も澄んでいるので香港の夜景もはっきりと見えることと思います』
と、優しい声音で語り掛け始めた。
粋な機長のアナウンスに、起きている乗客が一斉に機窓の外を眺め始めた。
……まだ三十分も先だと言われたばかりなのに。
そんな光景をほんの少しほっこり感じながら、自分も機窓の奥に視線を向けた、次の瞬間。
『私には航空大学の頃からの親友がおりまして、操縦士として共に切磋琢磨した日々を過ごしておりました。そんなある日、突然眼の病に侵され、その親友は志半ばで操縦士を辞めることになりました。その後、地上スタッフとして我々クルーを支え、新たな人生をスタートさせました。そんな時に一人の女性と出会いまして……』
どこかで聞いたようなエピソードに、思わず固まってしまった。