サイコな本部長の偏愛事情
心の傷は口にしないと癒えることはない

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「もう四日目ですよ?……どうしたんですかね」
「毎日の眼福がないと、仕事頑張れなぁ~い」

二日連休の非番明けに出勤すると、クリニック内の話題は財前さんの話で持ちきり。
今まで出張や仕事で見かけないことはあっても、体調不良で何日も休むことなんて無かったらしく、看護師たちが心配している。

四日前に見たあの光景が気になって仕方ない。
あの時、私がしっかり対処していれば……。

医師としての対応に間違いがあったのかもしれない。
あの時、脈拍を取ることもしなかったし、額や首筋の発汗具合を確認することさえしなかった。
悔やんでももう遅いんだけど、四日も休むくらいだから相当悪いに違いない。

「恩田さん」
「はい」
「酒井さんは何て?」

十分ほど前にエントランスプラザ内を巡回していた秘書の酒井さんを、たまたま見かけた看護師の恩田さんが声を掛けたらしく、それで今日も休みだと発覚したのだが。

「内緒なんですけど、一昨日昨日と検査入院されてたらしく、今日はご自宅で静養されてるそうです。私が看護師なので教えて貰えましたけど、他の職員には内緒らしいので、他言無用でお願いします、と」
「うん、それは大丈夫」

医療従事者には守秘義務がある。
それはいいとして……。
検査入院するという事は、何か病巣があるのか、気になる箇所が見つかったのか……。
どちらにせよ、『大事を取って』と言っていた三日前とは状況が異なるのは間違いない。

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