サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)

***

婚約用の指輪を購入して、自覚した。
自ら選んだ指輪をした彼女を見て、ホッとする自分がいた。

何とも思わない女なら感じない感情だし、好きでもない女に指輪なんて嵌めたりしない。
そもそも噂になること自体を即座に揉み消してたと思う。

例え、ふりであっても幸せだと感じるってことは、彼女のことを好きだと自覚したってことだ。

彼女に本当の恋人が出来るまで?
俺の目が失明するまで?
いや、社内の噂が落ち着くまでだろうが、その短い期間でもきっと満足なんだろうな。

こんな感情、もう二度と訪れないと思っていたから。
今のこの生活がいつまで続くか分からないし、もしかしたら明日には終わりを告げるかもしれない。
そんな男と未来を描く女性がどこにいるだろうか?

だから、こうして『ふり』でも十分だと思える。

***

彼女を自宅に招き入れ、彼女が淹れてくれた珈琲に口を付ける。
淹れ方だけでなく、カップの縁から三センチの量というのも、文句を一度も言わずに淹れてくれる彼女。
本当に俺には勿体ない女性(ひと)だ。

彼女からの質問に素直に答える。
嘘が嫌いだということ以前に、彼女に対しては隠し事をしたくない。

例え、ふりな関係であっても、こうして彼女の傍にいて顔を見ることが出来る間は……。

***

質問の流れで、思ってもみない展開になった。
彼女が俺に対して、少なくとも好意はあるだろうとは思っていたが、まさか好かれているとは思いもしなくて。

俺の言葉に、仕草に、頬を赤らめる彼女が可愛すぎる。
ギュッと抱き締めたくなる感情を押し殺して、理性を保つのが必死で。

なのに……。

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