隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「ですから、私に殿下の婚約者としての資格が無い。それが一番穏便に事を進める方法であると考えました」
 ルドルフがやっとアルベティーナの方に顔を向けた。だが、彼の眉は歪んでおり、困惑の表情を浮かべている。
「それで、なぜその相手が俺なんだ?」
「団長にはあのとき助けていただきましたから……。他の方に頼むより、団長に頼むのが手っ取り早いかと……」
 アルベティーナのいうあのときとは、もちろん潜入調査をしたあの一件である。何やら薬を飲まされ、身体が火照っていたところを慰めてくれたのがルドルフなのだ。
「手っ取り早いって。お前な」
 ルドルフは握っていたアルベティーナの手を離し、それで頭を支えた。
「もし、俺が断ったらどうするつもりだ?」
「それは……。他の方に頼みます」
「ばっ……」
 馬鹿か、とルドルフが口にした。
「誰でもいいのか? 相手は男であれば誰でもいいと、そう思っているのか?」
「そっ、そんなことはありません。一番は、団長を希望しますが。団長に断られてしまったら……」
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