【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「ティーナ。俺とも一曲、お願いします」
 セヴェリが笑う。
 兄と妹のふざけたやり取りにも関わらず、こうやって兄たちが自分のデビュタントを喜んでくれていることが、アルベティーナにとっては嬉しいものでもあった。
 セヴェリのリードは、やはり父親に似ていた。踊りにくいわけではないのだが、エルッキの方が踊りやすい。それでもセヴェリと踊っていても、周囲の視線というのはまとわりついてくるもので、その視線はアルベティーナを値踏みしているようにも感じた。そもそもデビュタントとはそういう役割も担っているのだ。つまり、社交界デビューを迎えた女性たちに、どれだけの価値があるのかを見定める場。
 だが、今回の視線の原因は、一緒に踊っているセヴェリにある。セヴェリ・ヘドマン、年は二十四。さらに独身。婚約をしている女性もいない。
 アルベティーナにとって、この二人の兄の最大の謎が()()なのである。どうして、父親も母親も何も言わないのだろうか。
 それでもきっと、アルベティーナにはたくさんの縁談を持ち込んでくるに違いない。何しろ社交界デビューを終えたのだから。()()を考えただけでもうんざりとしてしまう。
「ティーナ、疲れたかい? 向こうで休もうか」
 アルベティーナはこれから起こるだろう縁談話を勝手に想像して、うんざりとしていただけなのに、心優しい兄がダンスの輪から連れ出してくれた。給仕に声をかけて、飲み物を貰う。
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