【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「ティーナ。俺たちはまた仕事に戻らなければならない。いいかい、絶対に父さんや母さんの側を離れてはいけないよ」
 グラスの中身を飲み干したセヴェリは、空になったそれを給仕に返した。アルベティーナは飲みかけだったにも関わらず、セヴェリによってグラスを奪われる。
「向こうに母さんたちがいるからね」
 どうやらセヴェリは、可愛い妹をアンヌッカに預けたかったようだ。こちらに気付いたアンヌッカは小さく手を振っている。アルベティーナはセヴェリと共にアンヌッカの元へと向かった。
「アルベティーナ、立派だったわよ」
 それは、先ほどの謁見の挨拶を言っているのだろうか。それとも、今のダンスのことを言っているのだろうか。
「お母さまとたくさん練習をしましたからね」
「母さん、ティーナを頼みますよ。ティーナをダンスに誘いたがっている男が、その辺にたくさんいますからね」
「ええ。任せておきなさい。どこぞの馬の骨かわからないような男性に、私の可愛いティーナを渡しはしませんよ」
「母さんのそれを聞いて俺も安心しました。では、戻ります」
 セヴェリも他の令嬢から声をかけられるより先に、そそくさとこの大広間を出て行った。
「お兄さまたちも、忙しいのにわざわざ来て下さったのね」
< 15 / 231 >

この作品をシェア

pagetop