隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
 シーグルードが見せる笑顔が、アルベティーナの心を掻き乱す。
「そろそろ時間だ。行こうか」
 シーグルードが差し出してきた腕をとった。
 彼と共に向かった先は、サロンだ。幾度となく足を踏み入れたこの部屋は、床から天井まで続く大きな窓が外からの光を取り入れてくれる。
 サロンに入った瞬間、白んだ光に目を細める。だが、その前に立っているのがアルベティーナの両親であれば、今すぐにでも抱き着きたい衝動に駆られる。シーグルードもそれに気づいたのだろう。
「ティナ、行っておいで」
 アルベティーナの手を離し、背を押す。驚いた彼女はシーグルードに視線を向けた。だが彼は微笑んでいる。その笑顔にも背中を押されるようにして、アルベティーナはアンヌッカに抱き着いた。
「お父さま、お母さま……」
「あらあら。しばらく見ない間に、ティーナは甘えん坊さんになってしまったみたいね」
 アンヌッカの胸元に顔を埋めたアルベティーナは、溢れてくる涙を堪えることができなかった。せっかく綺麗に整えてもらった髪や顔がぐしゃぐしゃになっても、涙が次々と溢れ出てくる。
 アンヌッカは優しくアルベティーナの背を撫でる。アルベティーナの嗚咽が落ち着いたところで「そろそろいいだろうか」という声が聞こえた。
 その声でアルベティーナは、ここに国王と王妃がいたことに気づく。
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