【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
 王城からの豪勢な馬車であると、襲われる可能性が高いとイリダルは言いたいのだろう。
「私もご一緒させていただきます。アルベティーナ様に何かあったら困りますので」
「イリダルさんがそのような言葉でお話されていると、何か、変な気分ですね」
「私のことは、どうかイリダルと」
 それでもアルベティーナの心はどこかむず痒い感じがした。
 アルベティーナはクレアと並んで座り、その向かい側にイリダルが座った。まるで、二人を監視するかのように。
 カタン、と馬車は動き出す。乗り心地は悪くない。窓にはカーテンが引かれ、外を見ることはできないし、外からもこの馬車に誰が乗っているのかを確認することもできない。
 カタカタと馬車が揺れる音だけの空間。誰も、何も話さない。その会話の無い空間が、アルベティーナに緊張を与えていた。
 と、同時に彼女は気づいた。
「あの……。外を見てもいいですか?」
 馬車のカーテンを開けて外を覗く行為は、はしたないと言われている。だが、アルベティーナは気になることがあった。
「どうかされましたか?」
 腕を組んで顔を伏せていたイリダルが、顔をあげた。
「え、と。いつもであればそろそろ王城に着く時間だと思ったのですが」
 毎日のように屋敷から王城へ通っていたアルベティーナだ。そこまでの距離とそれにかかる時間くらいは把握しているつもりだった。
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