【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
ふぅ、とアルベティーナは呼吸を整えた。
「すみません……」
淑女らしく、落ち着いた声色を意識して声をかける。
予想していなかった出来事に、その男たちも身構えたようだ。だが、押さえ込まれている女性は、一人の大きな男に背後をとられ、口の中には何やらハンカチのようなものを突っ込まれていた。
「これはこれは、お嬢様。何か、御用でしょうか? その白いドレスは、本日デビューされたお嬢様ですね。おめでとうございます」
薄闇でも白いドレスは目立つのだろう。声をかけてきたのは、男のうちの一人、一番線の細い男でありながら一番紳士に見える男だった。それは彼だけがあの社交の場に相応しい格好をしているからだ。
「はい、ありがとうございます。ところで私、友人を探しておりましたの」
「そうですか。ご友人は見つかりましたか?」
「はい。そちらに」
そこで、アルベティーナは足を振り上げた。綺麗に弧を描いたそれは、見事、紳士に見える男の側頭部に命中した。踏ん張ることもできずに、紳士のような男は吹っ飛んで気を失っている。
女性を押さえつけていた男の一人が、じりっとアルベティーナと対峙する。彼女もすっと腰を落とす。どうやら、相手は刃物を手にしているようだ。その手を振り上げながら、アルベティーナに向かってきた瞬間、彼女は身を低くして彼の懐へと入り込む。ドレスの裾をたくし上げて、太ももに括りつけていた護身用の短剣を取り出した。
「すみません……」
淑女らしく、落ち着いた声色を意識して声をかける。
予想していなかった出来事に、その男たちも身構えたようだ。だが、押さえ込まれている女性は、一人の大きな男に背後をとられ、口の中には何やらハンカチのようなものを突っ込まれていた。
「これはこれは、お嬢様。何か、御用でしょうか? その白いドレスは、本日デビューされたお嬢様ですね。おめでとうございます」
薄闇でも白いドレスは目立つのだろう。声をかけてきたのは、男のうちの一人、一番線の細い男でありながら一番紳士に見える男だった。それは彼だけがあの社交の場に相応しい格好をしているからだ。
「はい、ありがとうございます。ところで私、友人を探しておりましたの」
「そうですか。ご友人は見つかりましたか?」
「はい。そちらに」
そこで、アルベティーナは足を振り上げた。綺麗に弧を描いたそれは、見事、紳士に見える男の側頭部に命中した。踏ん張ることもできずに、紳士のような男は吹っ飛んで気を失っている。
女性を押さえつけていた男の一人が、じりっとアルベティーナと対峙する。彼女もすっと腰を落とす。どうやら、相手は刃物を手にしているようだ。その手を振り上げながら、アルベティーナに向かってきた瞬間、彼女は身を低くして彼の懐へと入り込む。ドレスの裾をたくし上げて、太ももに括りつけていた護身用の短剣を取り出した。