【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
 カキン――。
 刃がぶつかる音が響く。アルベティーナがやるべきことは、とにかく時間を稼ぐことだった。あの場には、シーグルードと彼の護衛騎士がいた。この騒ぎに気付いて、すぐさま騎士団が駆けつけてくれるだろう。
「くっ……、この、女っ」
 剣同士の力比べても、アルベティーナは負けていない。何しろ、あの辺境伯の私兵団たちと共に鍛錬を積み重ねてきたのだから。一見、細腕のように思えるが、しっかりと力はついてきているはずだ。
 アルベティーナは押さえつけられている女性に視線を向けた。さらに、そのずっと後方に複数の人影が見え始めた。
 どうやら騎士団たちが駆けつけてくれたようだ。ほっと胸を撫でおろすと同時に、目の前の男と交わせていた短剣を一度引く。力任せに押さえつけていた男は、バランスを崩し倒れ込みそうになった。
 すかさず彼女は、男の首の後ろの急所を短剣の柄の後ろの部分で強く突いた。男はその場に倒れ込んだ。
 と、同時に複数の人影が動いた。女性を押さえ込んでいた男たちは、突然姿を現した騎士達に捉えられていた。
「なっ……」
 なぜここに騎士団がいるのか。と、その男たちは言いたかったようだ。だが、すぐさま身体を拘束されてしまう。その男たちに押さえ込まれていた女性も、騎士団によって救出される。先ほどアルベティーナが蹴り上げたことで伸びてしまった紳士に見える男も、気を失ったまま騎士団によって連れていかれた。
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