【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「いえ……。ただ、久しぶりに会ったティーナがあまりにも成長して驚いただけです。何でもありません……」
 エルッキは頭を押さえて項垂れることしかできなかった。
「そうだろう。何しろティーナは私の自慢の娘だからな。それよりもエルッキ。アンヌッカを連れてきてもらえるか? 私たちは先に馬車の中で待っている」
 コンラードの言葉にエルッキは頷いてから、王城の建物の方へと向かっていく。恐らく、彼は部下の誰かに指示をして、アンヌッカを連れてきてくれるだろう。
 アルベティーナはコンラードに連れられて、ヘドマン家の馬車へと向かった。
 馬車に乗り込んですぐに、アルベティーナは行儀悪く身体を投げ出した。コンラードは苦笑しながらそれを見ているだけで、咎めるようなことはしない。
「ティーナ。怪我はないかい?」
「はい、大丈夫です。ですが、あのように堂々と誘拐するなんて。初めて見ました」
「そうだな。あまりお目にかかるようなものでもないし、お目にかかりたいものでもないな」
 苦々しくコンラードは顔を歪ませた。
 どうやらアンヌッカがやってきたようで、外が少し騒がしくなる。
「もう。まったく、突然帰るだなんて……。あぁっ……」
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