【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
 じっと座って本を読むことよりも身体を動かす方が好きなアルベティーナであるが、この騎士団の話を受けようと思った時から真面目に貴族名鑑に目を通し始めた。今までは結婚相手を探すため、と母親からそれを手渡されても見向きもしなかった名鑑であるが、仕事上、必要なことではないかと思えたら難なく目を通すことができ、覚えることもできたのが不思議だった。
「私に何か用だろうか?」
 ルドルフの声は冷えているが、どことなく何かの期待を孕んでいるようにも聞こえた。
「ええ、そうですね。そちらの女性を紹介していただきたく」
 アルベティーナはリトルトン男爵に向かって妖艶に微笑んだ。すると彼も気をよくしたのか、口元をにやにやと緩ませている。
「さすがリトルトン男爵、お目が高い。彼女はクリスティン。孤児だったところを私が引き取ったのだよ」
 ルドルフのその口が饒舌になったのは、獲物が食いついたとでも思っているからだろうか。
「孤児? いつからゲイソン会長は慈善事業にも手を出し始めたのでしょう?」
 リトルトン男爵の言葉に、アルベティーナは微笑みを絶やさずにずっと彼を見つめ続けた。
(もしかして、偽物であるって疑われているのかしら)
「何を馬鹿なことを」
 そこでルドルフがくくっと笑う。
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