【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
 王城にある建物には騎士の間と呼ばれる場所がある。そこが騎士団に所属する騎士たちの控えの間でもあるが、彼らの執務室として読み書きの間としても使われている。大きくて重厚な木目調のテーブルがいくつか並び、各テーブルの周りにはひじ掛けのない赤い椅子が並べられていた。
 アルベティーナが騎士の間に戻ってきたときには、その椅子の半分に騎士が座っていた。腕を組んで転寝をしているもの、テーブルに向かって書き物をしているもの、隅の方でこそこそと話をしている者など様々だ。
 アルベティーナは備え付けの棚から、自分の筆記具を取り出した。この棚も騎士の間の色合いに調和した木目調の棚。むしろ、素材をそのまま使用している棚と表現してもいいだろう。この騎士の間に置かれている家具は、木目調の物が多い。派手ではないものをという配慮なのだろう。
 特に席が定められているわけでもないのに、アルベティーナがいつも使っている席は空席だった。それとなく定位置が決まっているのだ。テーブルに向かって椅子を引き寄せ、羊皮紙をテーブルの上に広げた。書く内容は決まっている。任務の時間、相方の名前、任務の内容。特記事項というのは任務中に問題があったかどうかだ。恐らく、ロビーを担当していた騎士からは、負傷者何名、暴行者何名といった報告があがってくるのだろう。だが、あの大女優の控室の警備についていたアルベティーナにとって、特記事項に記載するようなものは何もなかった。

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