【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「お疲れさまでした」
 その言葉と共に書き上げた報告書を手にして、アルベティーナは席を立った。
「お疲れ」
「またな」
 エルッキとセヴェリの妹という認識もされているからだろう。仲間の騎士たちからかけられる言葉は、決まりきったものだ。父であるコンラードの影響も大きいのかもしれない。彼女に卑猥な言葉をかけたり手を出したりしたら、その先にあるのはヘドマン一族の報復であると、水面下で噂になっていると教えてくれたのはイリダルだった。逆にその噂で男女の噂が立つようなことはないのだから、ある意味それには感謝だ。
 騎士の間を出たアルベティーナが向かった先は、ルドルフの執務室。彼が不在であれば扉のポケットにこの報告書を入れてさっさと帰る。だが、もし在室していたら――。
 コンコンコンと手の甲で扉を叩く。返事があるか、無いか。アルベティーナは静かに目を閉じた。心の中で十だけ数える。この間に返事が無ければ報告書を扉のポケットにつっこんで、さっさと帰ろう。いや、もう今すぐにでもそうしてしまおう、と報告書をポケットに入れようとしたとき。
「開いている……」
 間違いなくルドルフの声だ。彼に会いたいと思ってこの場に来たはずなのに、いざ会おうとすると手が震えていた。だが、先に名を名乗るべきであることに気付く。
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