隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
 客室の白を基調としたソファにゆったりと座っていたコンラードは、アルベティーナの姿を目にした途端、右手をあげてそう声をかけてきた。いつの間に帰宅していたのか、コンラードの前にはエルッキとセヴェリまで揃っていた。騎士服姿のままでないにしろ、少しだけ髪が乱れているのは帰宅して着替えてすぐにここに駆けつけたからだろう。
「ええ、お久しぶりです。お父さま」
 コンラードの前のテーブルには、空になったカップが置かれている。アルベティーナはミリアンに目配せをすると、彼女もすぐに気付いたのだろう。お茶を四つ用意する。
「それでお父さま。今日は、どうされたのです? お母さまは一緒ではないのですか?」
 コンラードの隣に座ったアルベティーナは、彼を見上げながら尋ねた。
(あら、お父さまも少し白髪が増えたみたい……)
 エルッキとセヴェリは、コンラードがここに来た理由を知っているのだろうか。コンラードは眉間に力を込めたまま、じっとアルベティーナを見つめている。
「ティーナ。騎士の仕事はどうだ?」
 コンラードはアルベティーナの質問には答えずに、彼女の近況を尋ねてきた。こうやって話題を反らす父親は珍しい。ということは、本心を隠しているはず。
「はい。とてもやりがいがある仕事だと思っています。向こうでお父さまたちと一緒に訓練に励んでいたおかげか、身体も思い通りに動きますし」
「そうか……」
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