セカンドバージン争奪戦~当事者は私ですけど?

episode⑤


ヨウと一緒に一旦自分のデスクに戻ってから

「総務に呼ばれているのでいってきます」

と小川課長に告げて部屋を出る時には、ヨウはすでにすごい速さでキーボードを叩いている。そして、総務へ行くと部長の部屋があると教えてくれた。ノックをして

「坂根です」

と名乗ると、電話をしたままの江藤さんがドアを開けてソファーを指さす。会釈してソファーに腰掛けると、すぐに電話を終えた彼が私の前にクリアファイルから2枚の紙を出した。

「部屋、考えた?通勤大変だろ?でも探しているヒマがない。違う?」
「はい…その通りです」
「たまにこうして総務でも案内するんだ。うちが物件を持っているわけじゃないから、これは本当にタイミングの問題なんだけど。販売スタッフの中で引っ越した者がいて、そうなったら不動産会社はすぐに広告を出してクリーニングするのが通常なんだけど、坂根さんが見てみないかと思って、今週のクリーニングと補修の期間だけ広告出さないように頼んである。2部屋ともここから30分くらいかな」
「ありがとうございます。見ていいですか?」
「どうぞ。どちらも1DKだけど広くはないし、エアコンがここと…こっちの物件ではここか?1台だからワンルームのように使うんじゃないかと思う」
「一応仕切れるのは、寝る時に仕切って電気代を節約できていいですね」
「もっと広いところがいい?」
「いえ、十分です。どちらも見学って出来ますか?」
「週末にわざわざより、帰りがいいよな?」
「出来れば…はい」
「確かめて連絡する」
「お手数おかけします」
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