俺様男子はお気に入りを離さない
「あー、やっべぇ」

薫くんは頭をガシガシと掻く。
苦悶するかのような表情に、なにか間違えただろうかと不安になって「ごめん」と口をついたときだった。

「千花子の破壊力抜群」

「え?」

「可愛すぎる。たまんねぇ」

「えっ?」

は、破壊力?
か、可愛い?
なにがどうなってるの?

「なあ、キスしていい?」

「えっ?」

もう思考がついていかない。
だけど「キス」の意味だけはしっかりわかる。

キスしていい、だなんて。
今まで勝手にしてくるばかりで聞いてきたことなんてなかったのに。

だから何て答えていいか、わからない。

「あ、あの……」

「嫌か?」

その聞き方はズルいと思う。
だけど今の私にはありがたく感じた。
キスしていいか、ダメなのか、答えなくてすむから。

「ううん」

嫌じゃないよってことを精一杯伝える。
結局それはキスしていいってことになるんだけど。

そんなことを考えていたのは一瞬で。
近づく顔に反射的に目を閉じた。
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