死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。
家に帰ると、いつも通りの光景。


「ただいま」
小さく声を出して、足を動かす。

「おかえり」

お母さんはキッチンの方から顔を出し、ニコッとして出迎えてくれた。


今日は機嫌がいい。


靴を脱いで手を洗い、自分の部屋へ向かう。


「ねえ、夏菜。」


2階にある私の部屋へ行く階段を登っていると、お母さんに止められたので振り返る。


「何かあった?」


ああ。この雰囲気大嫌いだ。前はお兄ちゃんに言われたし、この家族はホントに見抜ける力がすごい。


「何もない…よ?」

一応、爽玖くんの事以外は何もない。お母さんには爽玖くんのことは話してない。
 
確かに、爽玖くんの事でなんて返事すればいいかとか悩んでいたから、心配してくれたのかもしれない。




「そう?それならよかった」


私が爽玖くんの返事にオッケーしていたら、もう会えない。騒ぎになる。

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