【大賞受賞】沈黙の護衛騎士と盲目の聖女

 ——この娘が欲しい。俺の、俺だけのものにしたい。

 ほの昏い独占欲。自分の中に、こんな感情があるのを初めて知った。それでもまだ幼いユリアナに何かしたかったわけではない。ただ、彼女の未来は自分と一緒がいいと思った。

「わかった。それなら俺も、お前だけの王子様になるよ」

 本気で答えた言葉を、ユリアナがどこまで覚えているかはわからなかった。だがその日から、ユリアナはレオナルドにとって唯一の存在となり、気がついた時にはエドワードへの劣等感は消えていた。

 ユリアナが見つめる視線の先にいるのはいつも、レオナルドだったからだ。他の誰でもない、自分だけを見つめる少女の存在に、自然と自己肯定感が満たされていく。

 ——早く、彼女を婚約者として指名しておきたい。

 そう思っていたけれど、エドワードが婚約者を指名するまで、自分が先に決めることはできなかった。

 幸い、エドワードはセシリアを指名したため、次は自分の番だと思ったところで——。ユリアナはレオナルドを守るために片足を犠牲にしてしまう。

 それでも、将来の伴侶にしたいのはユリアナだけだった。周囲に認められる為に騎士団に入り身体を鍛え、三年もかかってしまうが、ようやく求婚する許可が得られた。片足が悪いだけであれば、王子妃として立つことは許されていた。

だが、二年前のあの日。あの襲撃さえなければ彼女に想いを告げ、結婚する段取りをつけていたのに。

 あの日の襲撃が、全てを壊し彼女の目の光を奪うことになった。
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