【大賞受賞】沈黙の護衛騎士と盲目の聖女

 レオナルドは襲撃犯を縛り上げ、口を割らせた。どちらの襲撃も隣国による攻撃と判明した後、レオナルドは国境で起きていた戦いに率先して身を投じた。生半可に鍛えていなかった彼は狂戦士とまで呼ばれてしまうが、勝利をもぎ取るためには冷酷になる必要があった。

 何としても、自分を守るために片足と両目を失ったユリアナの敵討ちがしたかった。王国内にも隣国に手引きをした者がいることはわかっている。その者たちもいつか必ず見つけ出し、罪を贖わせる。

初恋の少女だった彼女は、身を挺して庇ってくれた。その功績を元に彼女を妻として迎えたかったが、周囲はそれを認めなかった。

 盲目となった者が、王族の妻になることは許されない。なにより、父親であるアーメント侯爵から拒否されてしまえば、例え王族であっても無理やり娶ることは叶わない。

 さらに先見の聖女として神殿が認めてしまい、余計に複雑なことになった。神殿はユリアナを囲い込もうと圧力をかけてきたが、貴族院の議長となったアーメント侯爵は彼女を守るために森の奥に閉じ込めた。





けれど転機が訪れる。王宮で、父であるセイレーナ国王とアーメント侯爵が揃っていた時に、レオナルドは嘆願した。

「陛下、お願いがあります!」
「……レオナルド、お前の願いとはいつものことだろう。ユリアナ嬢のことは諦めろと言ったはずだ」
「ですが、彼女は私の為に犠牲を払っているのです! どうか、一度だけでも彼女に謝りたいのです」
「そうは言うが……。アーメント侯爵、そなたはどう思う?」

 そうですね、と腕を組んで考え始めた侯爵は、レオナルドを一瞥すると静かに語りだした。

「娘のユリアナも、もう二十歳となり今は静かに暮らしています。神殿も最近は大人しくなってきたのか、抗議の類も控えめになってきた。殿下、あなたであればユリアナも心を開くかもしれない」
「では、彼女の元に行ってもいいのか?」

 レオナルドは逸る心を抑えることなくアーメント侯爵ににじり寄った。だが、それをセイレーナ国王が片手を上げて止める。

「レオナルド、いい加減にするんだ。お前が結婚相手を決めないから、適齢期の令嬢たちが落ち着かなくて困っているんだぞ。だが、アーメント侯爵が許すのであればいいだろう。ユリアナ嬢の元に行き、最後の別れをしてこい。そして戻ってきた時には候補者の誰かと結婚しろ。それが私の出す条件だ」
「陛下!」

 ユリアナとの結婚が簡単でないことはわかっている。だが、それでも願い続ければいつか、彼女の手を取ることが許されると夢を見ていた。
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