【大賞受賞】沈黙の護衛騎士と盲目の聖女
 レオナルドの幸せを願わずにはいられない。昨夜は自分のわがままに付き合わせてしまったけれど、これから彼は自分の妻となる白い髪の女性を見つけ出し、彼女に幸せそうに微笑むのだろう。

 ツキンと胸が針で刺されたように痛む。昨夜、自分を求めて情熱的に抱いてくれたように、彼が他の女性を抱くかと思うと身が焦がれるように切なくなる。

 けれど、一度だけでも抱いてくれたことに感謝しなくてはいけない。いくら王族とはいえ、聖女の純潔を奪ったことが表明すれば何かしらの罰を受けることになる。けれど、レオナルドが自ら言わなければ、ユリアナの先見の力が失われたことは秘密にできるはずだ。

 万が一、明るみにでたとしても王族である彼であれば、神殿の攻撃からは守られるだろう。

 父はそのことを考えて、彼を送り込んだのかもしれない。……父はずっと胸に秘めて来た、ユリアナの恋情を知っているに違いないのだから。

 ユリアナは朝日を遮断するようにそっと目を閉じた。

 聖女の力を失った自分がどうなるのか、何もわからない。それでも自分にとって最初で最後の男が、レオナルドで良かったと心から思う。

 手の中の鈴が零れ落ちていく。チリリン、と鳴りながら床に転がっていく鈴の音に、もうこの音を鳴らすレームは消えたことを実感する。

「寒い……」

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