再会彼氏〜元カレは自分を今カレのままだと誤認しているようです~



そっと律の胸に額を当てて、ふっと笑ってしまった私こそ、どこかおかしいんだろう。


「今更何言ってんの、だよな」

「そうじゃないよ」


ドキッともギクッともしなかったと言えば、嘘になる。
でも、それよりも。


「律、意外と不器用だよね」


――愛しい。


「えー? 俺は器用だと思うよ。でも、お前に対して不器用だっていうなら……当たり。っていうかさ、そういうもんじゃないの」


「欲情」なんて、ちっともロマンチックじゃないことを言われてそう感じるのが、異常でふしだらなことだと言われても否定はできない。
寧ろ、納得してしまうところもあるけど。


「好きだって……真剣どころか信じられないくらい好きになれば、相手に対して不器用になるんじゃない」


それでも、そう思うのは止められない。


「それか、お前が男を狂わせる魔性の女だったりして」

「どこをどうしたら、そうなるのよ……」


私に、そんな魅力があるわけないのに。
もう少しくらい色気があればと、嘆いたことしかない。


「当たらずとも遠からず……だと思うけどー? ……それ、俺にしか作動させんなよ。お願い」

「さ、作動させてないし、そんな装備持ってない」


ぎゅっと抱きしめられ、お願いされて。
こんな台詞と回答で、ムードなんてありはしない。
なのに。


「そんなことないよ」


ぷっと吹き出した直後、優しく笑って。
そのまたすぐに、視線も声色も急激に艶を増す。


(……どっちが、色気標準装備なの……)


文句を言えるのは、心の中だけ。
耳朶に指が引っ掛かれば、もう私の瞼は閉じつつある。


「……律……?」


でも、それ以上律がこちらへ傾いてくることはなかった。

ほら、やっぱり。
魔性どころか、色気ゼロだ。
あんなこと言っておきながら、思いとどまることができるくらい――……。


「馬鹿。そんなわけないだろ」


みるみる間に落ち込んでしまった私に苦笑して額にキスしてくれたけど、それも気を遣ってのことだって分かってる。


「じゃなくて。潔くないなって。……自分の臆病さに絶望してた」

「え……」


律が臆病なんて。
いつだって、自信満々に見えるのに。


「お前、本当に顔に出るとこ変わんないね。確かに、なかなかハイスペックだと……って、まーた、そんな変な顔して。ま、自信あってもそんなにおかしくないでしょ。……お前以外のことにはな」


冗談ぽく笑いながら、私の頬を擽る。
私が変な顔してるのは、そのとおりだって思ってるからだ。
律の外見で、仕事やその他も器用にやってしまえるなら、そりゃ自信満々にもなるだろう。


「でーも。小鈴のことには、すごい怖がり。往生際悪くてやになっちゃう」


なんて、軽い言い方をした直後。


「……来て」


吐息とともに重く甘く囁かれて、手を引かれた。
カーテン、テーブルの側、ソファ。
それらを通り越した先を目で測って、ドクンと心臓が鳴った。

迷いようがなかった。
だってまた、キスはお預けだ。





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