麻衣ロード、そのイカレた軌跡❷/赤き巣へ

作者ナビゲート解説①

作者ナビゲート解説



本郷麻衣がその怒涛の邁進を開始した際、真っ先に彼女の眼前に飛びこんできた対峙相手は南玉連合のナンバー2、相川夏美でした。


で…、このチョイス、書き手としては当初から、単に互い女として嫌悪し合う敵対関係としての着想に留まっていた訳でして、さほど深い意味はありませんでした。


ですが…、『ヒートフルーツ』という作品が、超長編の群像ストーリーにまで到達するに及んで、結果としてこの夏美の存在は全編を通じ、俄然重く深いものとなりました。言わば、作者の意図しないうちに、気づけば麻衣とのオポジションに立つフロントキャラクターに昇華させていたのです。


従って、相川夏美には、本郷麻衣とは決して打ち解けられないスタンスをはめ込むことで、多くの登場人物と麻衣が絡む相関関係においては、リトマス試験紙的な色合いも含有させてしまったようなのです。


そんな現象を生んだせいもあってか、『ヒートフルーツ』全編版第1部序盤の都県境再編成を巡る、今回アップした展開局面では、事実上、麻衣VS夏美の対決という図式に変異したと言えます。


...


実際、夏美と麻衣の対決ファーストステージのストーリー展開は、正直、過去何度も加筆を経て、再構成・再編集を繰り返してきましたが、そのことで、今回アップした当該パートにはヒートアップ効果をもたらし、第1部序盤に於ける大きな山場として位置づけできたと自負しています。


そして以後、日本社会を仕切る東西広域暴力団ともボーダーレスをもたらすこととなる、稀代のイカレ少女・本郷麻衣の壮大な疾走ロードを語る上で、夏美との”フル対決”は、『ヒートフルーツ』全編を通しても欠かすことのできない重要プロセスを形成したと…。今回の作業を通じ、改めてそう確信した次第です。


ちなみに、”このこと”は、『ヒートフルーツ』第3部に於ける津波祥子とバグジーの頂上決戦の場を描破したパートエピソード(本サイトでは現在連載中の『ツナミガール』で挿入しています)で、かつての仲間たちと共に再登場する段でも本郷麻衣とは直接接することがないにもかかわらず、過激に進化し続ける麻衣とのコントラスト加減をも、決して色あせずに描き通せた背景にもつながったと思えるのです。


あの時代…、ニトログリセリン級な磁気を発し続けた本郷麻衣にとっては、必ずしも横田競子・合田荒子・大打ノボルらと同格を成す好敵手という範疇には映らなかったかもしれませんが、相川夏美との対峙過程は、以後長大に続く『ヒートフルーツ』』という群像物語の極めて大きなターニングポイントかつハイライトとしての役割を反映していくことになるのでして…。





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