水と油の私達
しかし現実はそう甘くなくて…

第一声以来なにも喋らなかったその男は、薪くんではなかった。



「お前ちっちぇえな。触るだけで壊れちまいそう」

「だ、れ…?」

「あ?言う必要ねえだろ?」



顔は暗闇で見えないけれど、声は聞いたことのないもので、私の鼓動を速ませる。



「なんで私なの?」




絞り出すような私の声に男はハッ、と鼻で笑う。

それと一緒に男のアクセサリーが揺れて私の頬をまた掠めた。



「知らねえよ」

「なんでっ…」

「あー、気分だ気分。なんとなくだよ」



気分で私はこの男に捕まったの?

…冗談じゃない。

私は男の腕を退けようと必死に踠く。




「退いてよっ…!」




やっとの思いで突き飛ばす。

男はよろめく。

けど…
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