イケメン総長とキケンな関係 ~出会いは突然の入れ替わり⁉ 愛はそこから始まった~



 だけど。
 今はまだ知らない。
 桐生くんたちは。

 入れ替わっている、私と龍輝くんが。
 そういうことを。


 まだ話していないから。



 だから。
 思っていない、桐生くんたちは。
 龍輝くん(私の姿)が言ったとは。

 思っている、確実に。
 私が言った。
 そういうふうに。


「どういうふうに説明しようかと思ったけど、
 細かく説明する前に
 俺たちの今の状況を先に言った方がいいな」


「……『俺』って……
 君、なんだかイメージと違うね……」


 困惑している、桐生くんたちが。







 無理もない。



 心は龍輝くんでも姿は私。


 言っている、私が。
 自分のことを『俺』と。

 見えていない、そのようにしか。
 桐生くんたちには。





 私のイメージ。
 言葉使い。
 あり過ぎるのかもしれない。
 それらのギャップが。


「お前たちに紹介する。
 この子は向陽(ひなた)茉蕗(まろん)


 引き続き。
 困惑している、桐生くんたちが。

 そんな中。
 龍輝くん(私の姿)はそう言いながら。
 龍輝くん(自分)(私の姿)の右手の親指。
 向けた、龍輝くん(自分)(私の姿)の顔に。


 それから。
 龍輝くん(私の姿)は。
 顔のところまで上げている右手。
 その右手を下して両腕を前に組んだ。


「単刀直入に言う。
 今、話しているのは茉蕗本人ではない。
 俺が話しているんだ」


「……は?」

「えっ?」

「うん?」


 龍輝くん(私の姿)の言葉。


 その言葉の意味。
 わからない、何が何だかさっぱり。

 そういうような表情(かお)をしている。
 桐生くんと諏藤(すどう)くんと平岡くん。


「俺と茉蕗は入れ替わっている」


 龍輝くんのストレート過ぎる言葉。

 その言葉に驚き過ぎたのか。
 固まっている、口をポカンとして。
 桐生くんと諏藤くんと平岡くんが。


「つまり、
 茉蕗が俺で
 俺が茉蕗なんだ」


 言わない、何も。
 桐生くんたちが。


 それだからかもしれない。
 言った、もう一度。
 龍輝くんは桐生くんたちに。

 同じ内容。
 だけど。
 言葉を変えて。


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