再会した敏腕救命医に娘ごと愛し守られています
「俺にとって優里は全てだ」

「え?」

「18の頃から俺の中で占める優里はどんどん大きくなっている。いなくなってからもずっと考えていたんだ。どうして優里なんだろうって。いなくなってしばらくして、忘れなきゃいけないと思った時期もあった。それでも俺の中から消えることはなかった」

「斗真?」

「そのくらい俺の中は優里でいっぱい」

ちゃめっ気のある言い方はやはり彼が変わってない証明のよう。

「だからこれからは優里のためになんでもしてあげたい。もう後悔はさせない。おれも後悔したくない」

「でももう私には子供もいる。斗真とよりを戻すわけにはいかない」

「その子供は俺の子だろう? もしも違うとしても関係ない。優里の子供なら可愛がれる自信がある」

「そんな……」

彼の言葉に流されてしまっていいのだろうか。
返答に困り、言葉が詰まる。

「ママ?」

もぞもぞと紗良が目を覚ましたようだ。
私はさっと彼の手の中から改めて引き抜くと紗良を抱き上げた。

「よく寝た?」

「うん。あ、せんせいもいた」

「おはよ。先生も一緒にお昼寝しちゃったよ」

紗良は起きたてだが寝起きがいい。
お茶を飲ませると斗真とすぐに遊び始めてしまった。
どうしたらいいのか分からず、私は洗濯物を取り込み始めた。
たたみながら隣で絵を描くふたりの姿を見てなんとも言えない温かな気持ちになった。
さっきも感じた。
こんな未来があの時に諦めなければあったはず。
斗真だけが悪かったんじゃない。
私だってもっと斗真に伝える努力をすべきだったのかもしれない。
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