再会した敏腕救命医に娘ごと愛し守られています

前進

京介と亜依の結婚式の招待状が届いた。
連名の封筒を見た瞬間、思わず歓喜に沸いた。
封筒を開けると、2人の結婚が整いましたと書かれており嬉しさで胸がいっぱいだ。
紗良を連れての式への参列が招待されていた。
私はすぐに未来と連絡をとり、出席の返信をした。
亜依の実家である島根での結婚式で、京介は島根に引っ越すと聞きとても驚いた。内科医になった京介は関東にいたので亜依とは遠距離だった。その距離を乗り越えての結婚だったが、まさか京介が島根に行くとは思ってもいなかった。
未来とその話をしたら、「あの頃から京介は亜依に惚れ込んでたからね」とさらりと言われた。確かに京介はあの頃から亜依ひとすじだ。そんなふたりが結ばれることが嬉しくてたまらない。

結婚式前日、私は未来と一緒に飛行機に乗り込むと島根へと初めてやってきた。
初めての飛行機に紗良は大喜びだった。
はしゃぎつかれ途中で寝てしまったが、未来に手伝ってもらえ移動もスムーズだった。
久しぶりに亜依と会え、大学の頃が戻ったように話に花が咲いた。亜依はどんどん可愛くなっていて、輝いているように見えた。幸せが滲み出ていて私まで嬉しくなってしまった。

「久しぶりにグループのみんなと会えるんだね」

「うん。同じテーブルにしてるからね」

地方に行ってしまったメンバーもいて、卒業後会うことはなかなか出来ずにいた。系列病院で働いているのでつながりは消えていないが、あの頃のように時間が取れない。こうして式に呼ばれ、集まれることが何よりも嬉しかった。
みーちゃんと呼び、仲のいい未来だけでなく、いつもお菓子やおもちゃをもらっている亜依にも紗良はすぐに懐いた。

「紗良ちゃんは本当にかわいいね」

「そうなの。紗良ちゃんは癒しなんだよね」

未来が代わりに答えているのを横で聞いて笑ってしまう。

「大変なことだってたくさんあるのよ。でもやっぱりこの笑顔に癒されちゃうんだけどね」

遊んでいる姿を目で追いかけていると、亜依は小さな声で核心をついてきた。

「彼とはどうなの?」

「うん。今は友達だよ。前みたいにいい関係だと思う」

「それだけ?」

亜依も未来も言いたいことは同じだろう。よりを戻さないのか、と。
でも正直なところ今の関係が心地いい。
お互いの生活もあるし、付かず離れず心の安定が保たれてると思う。
やり取りは楽しいし、彼といると満たされる気持ちもある。けれど前の関係に戻ることでまた不安になるのが怖い。
斗真も今以上の関係は望んでいないと思う。

「それだけだよ! もうっ。私は今のままで幸せだよ」

笑って言うが、ふたりはどこかしっくり来ないのだろう。まだ何か言いたさげだが、私は話を切り上げた。その空気を読んだふたりもそれ以上言ってくることはなかった。

翌朝、私はネイビーのドレスに着替え、手早く髪をアップにした。地味な色だがシングルマザーの私には落ち着いた色の方がいいと思った。けれどチュールが可愛らしくてついデザインの甘いものを選んでしまった。紗良にはピンクのワンピースを着せた。リボンがたくさんついていて、プリンセスみたいと気に入っている。
未来と一緒に会場へ行くと多くの来賓で溢れていた。
京介は医師として付き合いが広く、会場もホテルで一番大きなホールだった。そこかしこで挨拶する会話が飛び交っており、病院関係者だと理解した。

「よお」

誠一郎と礼央が声をかけてきた。

「久しぶり!」

ふたりはなんだか少し見ない間に大人びた顔になっていた。あの頃よりも年月を感じる。

「本当に優里がママになったんだな」

紗良を見ると笑って話しかけてきた。体の大きな彼を見て珍しく紗良は私の後ろに隠れてしまった。
大人が多いこの会場の雰囲気に萎縮してしまったのだろう。
私が抱き上げようとした時、ひょいっと後ろにいたはずの紗良が誰かに抱き上げられた。
驚いて振り返るとそこには斗真がいた。
< 67 / 74 >

この作品をシェア

pagetop