夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
第七章『抱きしめてもいいか?』
◆◆◆◆

 ランスロットは朝からシャーリーの机を動かしていた。彼女が執務室に来るより先に、この机だけは移動させておきたかった。
 昨日、シャーリーから同じ部屋で仕事をしたいと言われた時には、飛び上がって喜びたい気分だった。だが、食事中ということもあって自粛した。
 ガシャガシャと机を運んでいると、また不躾に入り口の扉が開かれた。
「おはよう、ランス。今日も朝から力仕事か」
 ニヤニヤと口元に笑みを浮かべながら、楽しそうにこの部屋に入ってくる人物は一人しかいない。間違いなく、ジョシュアである。
「ああ。見ればわかるだろ?」
「ああ。見ればわかる。お前がシャーリーの机を自分の席の近くに運ぼうとしているところがな」
 ちっ、とランスロットは舌打ちをした。残念ながら、近くではないのだ。彼女の机はランスロットの執務席の近くではなく、ここの入り口の近く。ようするに、一年前と同じ場所である。
「なんだ、シャーリーの机はそこに置くのか」
 執務席の近くではなかったことに、ジョシュアはにたりと笑う。
「一年前もここから始まったんだ」
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