夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
 ランスロットは鋭く目を細め、眉根を寄せた。
「イルメラがついていたはずだ。イルメラはどうした」
「そのイルメラがやられた。だから、シャーリーは攫われたと判断した」
「なんだと? あのイルメラだぞ?」
 イルメラは侍女であるが、この屋敷で働く前は女性騎士であり、ランスロットの部下であったのだ。
 彼女をシャーリー付きにしたのも、騎士としての経歴があったためである。
「イルメラは魔導士団で預かっている。今回の事件の被害者でありながら、目撃者だからな。彼女の話を聞けば、シャーリーの居場所がわかるかもしれない」
「俺も動く」
 慌てて寝台から降りようとすると、セバスが綺麗に畳んである騎士服をすっと差し出した。
「昨日の服は斬られてしまいましたので。新しいお召し物でございます。どうせ止めても、行かれるのでしょう?」
 ランスロットはセバスから騎士服を受け取った。
「ランス。お前の昨日の話も聞いている。その身体で動くというのなら、これを飲め」
 ジョシュアは小さな黒い瓶を手渡した。
「お前の身体の毒はまだ抜けきっていない。だから、動きに制限があるはずだ」
 ジョシュアに指摘された通り、身体は重いし、軋むように痛むときもある。だから、いつもより動きは鈍い。
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